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「マーチ博士の四人の息子」は傑作!

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 面白い!!!! 表紙に引かれ、帯のコピーに引かれ、さらに裏表紙の解説「『悪童日記』のアゴタ・クリストフが絶賛した」の一文が決定打となって買った、未知の作家の本。実は最近、読書家の友人Kちゃんから、「悪童日記」をお勧めされていたので、その作家が絶賛するのであれば、と購入してみた。読み始めたら止まらない。そして、読み終わっても、結末の興奮が冷めない。

 医師のマーチ博士の家のメイド、ジニーはある日、夫人の毛皮のコートをこっそり着てみる。すると、毛皮と裏地の間に隠された書き付けを発見。そこには、マーチ博士の4人の息子の「誰か」による、殺人の告白が書かれていた。息子たちは4つ子で、大学生や弁護士事務所の研修生であり、それぞれの部屋を持ち、家族はいつも一緒に行動する。「殺人鬼の日記」を盗み読むジニーの周辺では、殺人鬼が書いた通りに殺人が行われていく。恐怖におびえながらも、家族を監視し、犯人を突き止めようとするジニー。やがて、「誰か」に日記を盗み読みされていることに気づいた殺人鬼は、彼女にあてて日記を書くようになり、ジニーもまた、殺人鬼を挑発し始める。

 映画にもよく、「このトリックを見破られるか!」「最後まで結末がわからない」「どんでん返しが〜」などのキャッチコピーがあるが、推理もの好きの私には結構わかることが多い。でもこのミステリーは本当に、犯人が誰かわからない。「わからない」ということより、殺人鬼の存在を知ってしまったメイドとその殺人鬼との往復書簡のような展開が、怖い。一つ屋根の下で正体のわからない殺人鬼と暮らす恐怖。早く先が知りたくなり、乗り物に乗っていても、料理をしていても、食事をしていても、寝ても覚めても読みたくなって手に取っていた。本作が著者にとってミステリーのデビュー作というが、他の作品もぜひ読んでみたい。ジェフリー・ディーヴァーを知ったときと同じくらい、楽しみな作家が登場してくれた。こうなったら、「悪童日記」も読まなきゃな。

著者:ブリジット・オベール(ハヤカワ文庫)
訳:堀茂樹、藤本優子

by kikimimi_asabuya | 2015-10-25 13:48 | Book 本 | Comments(0)

札幌在住ライターの映画と本と綴りごと


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