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映画「ユリゴコロ」

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 始まってまもなく、来るんじゃなかったと後悔。映像を見ていられない、音を聞いていられない。サスペンスをはじめホラーもゾンビも平気だけど、こういう、無意味に殺人を犯しながらフツーに生きている状況を見るのが怖くて耐えられない。何度か目を閉じてスクリーンを見ないようにしたが、「その音」は聞こえるし、席を立って帰ろうかとも思ったが、仕事で来ているのだから放棄するわけにもいかない。それに、これがどういうことなのか、どう展開していくのか、ほんのわずかの興味が勝ってそのまま座っていた。まさに、本編で松坂桃李が演じる青年が、殺人鬼の手記のとりこになったように・・・。
 最も興味が湧いたのは、沼田まほかる、という原作の作家。2005年、第5回ホラーサスペンス大賞を受賞して56歳でデビュー。2011年に発表した「ユリゴコロ」がヒットして“まほかるブーム”となり、2012年に第14回大藪春彦賞を受賞。本作が最初の映画化となる。10月公開の「彼女がその名を知らない鳥たち」は2作目となり、映画界でも“まほかるブーム”が起きそうだ。この「共感度0、不快度100」といわれる作品を発表する彼女の経歴がすごい。20歳で結婚、34歳で離婚、出家して僧侶となり、40代起業し、55歳で破産(※「彼女がその名を知らない鳥たち」資料より)、そして初めて書いた小説で受賞する。波瀾万丈というのはこういうことだろう。だからこそ、こんなドロドロした、人間の裏や闇を描けるのかもしれないと思えた。ただ本当に本作は、松山ケンイチが登場し始めて「もしかして、そういうこと?」とわかりかけるまで、気分が悪くなるような場面が続く(※個人差があります)。前半、ちょいと、辛いかも。「ユリゴコロ」とは「よりどころ」の意。9月23日より上映中。

監督・脚本:熊澤尚人
原作:沼田まほかる「ユリゴコロ」(双葉文庫)
出演:吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチ、清野菜七、木村多江、ほか

 カフェを営む亮介(松坂)は、店の経営も軌道に乗り、スタッフの千絵(清野)を結婚相手として父にも紹介、幸せになれるはずだった。だが、男手一つで育ててくれた父が余命わずかと知らされ、千絵も失踪。傷心の日々を送る亮介は実家の押し入れで、1冊のノートを見つける。「ユリゴコロ」と題されたそのノートは、美紗子(吉高)と名乗る女の“殺人の手記”だった。「私のように平気で人を殺す人間は」で始まるそれには、彼女が幼かった頃から繰り返された殺人の記録が生々しく書かれてあった。それからの亮介はノートのことが忘れられず、父の留守に家を訪れては続きを読むのだった。やがて美紗子は洋介(松山)と出会い、愛することを知っていくが、亮介は次第に、この手記が創作ではないと思うようになる。そんなある日、千絵の同僚だったという細谷(木村)が、千絵の伝言を持って亮介に会いに来る・・・。


by kikimimi_asabuya | 2017-09-24 20:04 | Movie 映画 | Comments(0)

札幌在住ライターの映画と本と綴りごと


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