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落語「柳家小三治」独演会

TV北海道主催の落語会「柳家小三治 独演会」に26日、
80歳代の母を連れて行ってきた。
19時開演で、座席は前から2番目の真ん中。
よ〜く見えた小三治さんは、ずいぶん年を取ったようだ。

というのも昔、小三治さんはFM北海道で番組を持っていて、
当時この局で仕事をしていた私もよくレコード室などで見かけた。
あの頃の小三治さんはバイクに乗っていて、
革のライディングスーツを着て来た記憶がある。
この日、舞台袖からゆっくり歩いて高座に上がる小三治さんを見て、
あの頃と比べて「おじいちゃんになったなぁ」と思ったのだけど、
話し始めたらもう、
その声の良さと間(ま)の素晴らしさにすっかり魅了されてしまった。

「小三治の落語は、まくら(いわゆる“前振り”)が長い」らしい。
小三治師匠の本は何冊か持っているが、高座は見たことがなかった私。
大好きな立川談春さんも“まくら”は割と長いので、
そんな感じだろうと想像していたが、いやいやなんと、
前座さんの後、中入り(休憩)前の1時間近くず〜っと、その時間だった。

落語「柳家小三治」独演会_e0343244_19344128.jpg
演目の「美空ひばりと船村徹」とあるのがその“まくら”。
つまり、落語じゃないもので前半を終わった、ということ。
思いつくままに話しているような、回顧録のような内容で、
昨年の札幌での落語会で熊本地震の寄付金を集め、
その後京都でも同様に集めたお金を熊本に持って行ったという
「お礼」が始まりとなり、
熊本に行く機内で会ったある女性の話となり、
手元の湯飲み茶碗を時々手に取り、
まさに「お茶を飲みながら」思い出すままに話していく。

それがまた、ちっとも退屈じゃないのが、さすがの話芸。
普通の人(おじいちゃん)なら、
こんなグダグダな「世迷い言」(本人談)のような話を
1時間近くも聞いてはいられないだろう。
たまに、言うことを忘れたような、
あるいは、口走ったことを後悔するような、
ちょっとバツが悪そうにはにかむ表情がまた、かわいい。

さんざん話した後、ふと時間を思い出したように
舞台袖にいた女性マネージャーに「今、何時?」と聞く。
「20時10分です」。
お客にも聞こえるその場で、残り時間の時間調整が始まる。
「お客さまの休憩が15分、それを取ると●●分…」と言うマネージャー。
なんと、お客の休憩時間も削られる(笑)。
それでもまだ話し続けた小三治師匠が
「あとで落語やります」と言って高座を下りたのは、20時半くらい。

中入り前の場内アナウンスがまた、笑えた。
「(中入りは)15分と言っておりましたが、
風向きが変わりまして、5分でお願いします」的な内容。
「風向き」って…、とお客にもウケていた。
演(や)る側、観る側、どちらにも遊び心があって、楽しい。
母も大満足で、帰路いつまでも「いや〜、面白かった」と言っていた。

いろいろ調べてみると、
小三治の「まくら」だけを集めた本も数冊出版されているらしい。
もはや講談?と思うほど本当に長かった小三治師匠の「まくら」だが、
その内容と語りは、さすが「人間国宝」!
次回もまた、母と一緒に行けるといいな。


by kikimimi_asabuya | 2017-04-28 19:35 | Rakugo 落語 | Comments(0)

札幌在住ライターの映画と本と綴りごと


by kikimimi_asabuya